2011年1月17日月曜日

大失業時代(祥伝社)

著者:門倉貴史 出版社:祥伝社 発行年:2009年 本体価格:760円
リーマン・ブラザースが破綻したときは、どこかの百貨店のフロアにいた記憶がある。そのニュースを携帯電話かなにかで知ったときには「まさか」と思ったが、その後背筋が寒くなるような思いがした。アメリカ金融資本のなかでは老舗でバブルの時期に日本からも就職者がいた。入社2年目で年収1000万円、2000万円という金額が取りざたされていたが、実際、外資系金融機関となるとそれぐらい利益を上げている高収益産業というイメージだったのだ。その後、いわゆる構造改革の時代になると貯蓄を貸付金にまわす旧来型の金融資本よりも、貯蓄をさらに貸付以外の投資にまわす「投資銀行」「投資企業」が収益性が高いといわれていた。リーマンブラザースはまさにこの投資銀行で、バブル崩壊後も高い収益率をほこっていたと信じられていた。それだけにその巨大金融機関が破綻した影響は大きい。なぜゆえにアメリカ合衆国がこの巨大企業を破綻までおいやったのかは不明だ。その後の財政投入の金額や世界に与えた影響を考えると民事再生法でもなんでも生きながらえさせるほうが今となっては良かったように思える。ただしその後はやはり「信用縮小」のスパイラル現象が起こり、日本でも各種企業が縮小経営に乗り出した。この縮小経営はけっきょくは給料の削減→消費の減少→企業の売上高の減少→給料の削減→…というデフレスパイラルを描いていく。この本ではその「リストラ」を著述しているのだが、ある程度著者の予想どおり失業率は5パーセント前半で2010年は推移。さらに各種企業の負債も削減された傾向になったがこれは負債を抱えてまで投資しようという企業の投資マインドが縮小した状態を示している。この数値の実態を各種論じ、政府紙幣発行の問題点や政府の雇用対策への提言をおこなったのがこの新書。ただ農業や福祉産業で雇用調整を…とはいってももともと低収益産業(場合によってはボランティア産業)のため、工業やサービス業からの労働移動がスムースに行われるかはかなり微妙。エンプロイアビリティについてもページが割かれているが、雇用されるための能力を磨くにはやはりそれなりの時間と周囲の「認知」の時間がかかる。それほど即効性がある対策が呈示されないところに今回の不景気の根の深さを感じる。

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