2009年9月9日水曜日

誰か(光文社)

著者:宮部みゆき 出版社:光文社 発行年:2005年
2003年に単行本として発行されたものが新書サイズで発行されたもの。「名もなき毒」の前編にあたる。自転車事故で不慮の最後を遂げた運転手の家族を思い、何某巨大コンツェルンの義父から調査を依頼される。そして地味な個人運転手の過去を探っていくうちに、深い人間の人生の奥底にたどりつく…。
「人生の成功も幸せも山っ気でつかめるものじゃない。だからおまえも、結婚相手を選ぶときは、よくよくそのことを考えろって。山っ気とか野心とかは薬味みたいなもんだから、あったほうが人生が美味しくなる。だけど薬味だけじゃ一品の料理にはならないんだて」(112ページ)
「男と女はね、くっついていると、そのうち品性まで似てくるもんだよ。だから付き合う相手はよくよく選ばなくちゃいけないんだ」(344ページ)
地味な人生の中で娘に幸せな結婚生活を願う個人運転手の思いが伝わるセリフだ。推理小説というよりも人生小説という感じ。美空ひばりの「車屋さん」の引用はメロディを知らなくてもなんだか泣かせる引用になっているのがさすがに巧い。

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