2009年9月14日月曜日

エンデュアランス号漂流(新潮社)

著者:アルフレッド・ランシング 翻訳:山本光伸 出版社:新潮社 発行年:1998年 評価:☆☆☆☆☆
 サー・アーネスト・シャクルトン。一般の市民生活ではかなり問題もあったし、漂流した時点で何らかの意思決定のミスをおかしたケースも少なくない。ただし1915年1月時点で南極の流氷地帯に船ごと閉じ込められ、乗組員の命を守るために事実上不可能と思われたウェッデル海脱出、そしてサウスジョージア島までボートでたどり着き、再び乗組員が避難しているエレファント島に帰還。結局全員の命を救出したそのリーダーシップと計画変更の柔軟性は読んでいくうちにしみじみとした感動をよぶ。仮の目標を設定してその準備をし、さらにアクシデントがあった場合には目標を変更するとともに方法も変更するという柔軟さと不屈の精神。当時40歳のシャクルトンの堅固な冒険家としての自負がうかがわれる。「人は計画し、神は成否を決定する」(164ページ)という言葉が胸にしみる。人事を尽くせばあとは結果は神のみが知るところだ。四六版374ページの大部の本だが、おそらくこの本も読み始めると脱出まで一気に読み通してしまうだろう。アムンゼンやスコットほどの有名さはないが、1915年当時の英国冒険家の気質がうかがいしれる膨大なノンフィクションだ。

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