2009年9月27日日曜日

検察捜査(講談社)

著者:中嶋博行 出版社:講談社 発行年:1997年
 購入した本は2007年7月20日第27刷。なるほど脅威のロングセラー。検察庁が絶対の自信をもって立件した刑事事件で無罪判決を言い渡した裁判所に対しては「集中控訴」とよばれる手法があるなど、いろいろ真偽(?)を取り混ぜた司法の内側が明らかにされる。実際のところ日弁連本部への検察捜査などは、世も末の暴挙となるが、いかなる所以で日弁連という組織が独立性を確保してきたのかその沿革もこの本を読むとわかるようになっている。まだパソコンが普及していない時代の話でワープロのフロッピーが大きな鍵を握るが、舞台設定はそうした技術的な問題を問題にしないほど現代的なまま。昭和38年ごろの「公判専従論」(アメリカ型検察制度)が導入されると確かに検察庁の人員不足は解消されるが、警察庁の捜査活動の範囲は拡大するのに反比例して、検察庁の職域は著しく狭くなる。精密刑事司法という制度がいいのか悪いのかはまだ客観的な検証をされないまま現在に至る。先日の大物政治家秘書への検察捜査など国家としての「立件」という意思表示は確かに検察庁独自の捜査で大きく示せるのは事実だが、かといって警察庁による捜査→検察庁による公判という「住み分け」ができないか、というとそれはまた別問題。この本を読むとミステリーというよりも司法界の抱える戦後の構造的問題が面白く理解できる。「ものがたり」にすると、「理解しやすい」という一例か。

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