2009年8月31日月曜日

失敗は予測できる(光文社)

著者:中尾政之 出版社:光文社 発行年;2007年 評価:☆☆☆☆☆
 「失敗学」の本ではあるのだが、畑村先生とはまた違う切り口の説明で、内容は何かを「製造」する業種であれば、必ず応用が利く内容となっている。技術者向けの本ではあるが、それこそより「上の段階」にいったん昇り、一つ次元の高いところから俯瞰して下をみると、より具体的な「解」にたどりつくことが可能となる。重大事故のほとんどが「類似災害」という指摘があり、失敗をある程度パターン化しておくと、今後のミスの防止にもなる。なにかしらの欠陥はなにかしらの事情によるし、別の業種・業態のミスであっても、それを自分の状況にてらしあわせて一種の「解」を導出することで、類似災害を防止する方法を導くだすことが可能となる。そうなると新聞記事で報道されているような技術的事故(あるいは社会面にあるような犯罪についての報道であっても一種の失敗であるから)それを日常生活のいろいろな局面で活用する思考方法がこの本から学習できるというわけだ。
 さらに革新的なのは目標の設定(要求定義)までさかのぼって全体をみることで、また新たな解決策を導き出せるという第3章のくだりである。失敗の防止だけでなく要求定義を明らかにすることで(目標を明らかにすることによって)創造することもできるという失敗学のさらに先までが紹介されている。目標設定をしっかりしぼって下位の要求定義も設計しておくということが大事だということがわかる。この内容が新書サイズで読めるというのがすばらしい。

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