2008年10月31日金曜日

まぐれ~投資家はなぜ運を実力と勘違いするのか~(ダイヤモンド社)

著者:ナシーム・ニコラス・タレブ 出版社:ダイヤモンド社 発行年:2008年 評価:☆☆☆
 不確実性と統計確率の話をかなり辛らつに、そして面白く書いた本。「カリスマ・トレーダー」がいかなる経緯をへて作り上げられ、そしてその成功要因がいかにあてにならないのかを説明してくれる。最終的には、統計的な平準値に収益率が落ち着くのであれば、発生しうる最大の損失を回避できるような行動や意思決定がトレーダーにとってはないよりもの武器になる。いいかにリターンを積み上げていても、発生しうる最大のリスクが実際に発生した場合に、そのトレーダーは「行方不明」にならざるをえない…。短い動きから短時間に何かを読み取るよりも長期的なトレンドを重視することも著者は説明してくれる。短期的な現象はノイズであり情報に値しないケースが多いからだ。そして個人的に興味深かったのは241ページの「二重思考」。システム2といいうのはいわば定型的なアルゴリズム的処理の学習だが、そのうち自然発生的な情緒的な部分(システム2)が経験などによって研ぎ澄まされていくケースがあるという。実際、オプショントレーダーには数値的な分析以外のシステム2的な要素も強くなってくるらしい。確率やオプション取引などに興味がなくとも、実際に生活をしていく面で、「使える考え方」が満載。ノイズにまどわされない意思決定についても学習することができる。2008年1月31日発売で4月23日ですでに5刷の売れ行きを示している。やや分厚い本ではあるが、読んだだけの価値は十分あり。

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