2008年10月8日水曜日

ララピポ(幻冬舎)

著者:奥田英朗 出版社:幻冬舎 発行年:2008年 評価:☆☆☆☆
 全部で6つの短編が相互に登場人物をリンクさせながら最後に完結するという手法。やや哀しいトーンを帯びた小説で、しかも性描写がこの作家にしてはやや多いかもしれない。が、かなり面白いことは事実。小説特有のスキルであえて省略して描写しておいて、肝心なことは最後で描写する…というのも登場人物が多彩なだけに効果的。32歳のフリーライター、23歳のスカウトマン、43歳の主婦と20歳の娘、26歳のカラオケボックス店員、52歳の官能作家、28歳のテープリライターなどが織り成す人間模様。関係なさそうで最後にはリングのような円関係になっているがどれもほろ苦い結末だ。特にすべてになげやりな43歳主婦の生活面の描写はリアリティ満載ですごい。腐った大根が廊下に放置されていたりするのだが、なんだかこういう43歳の主婦は実際にこの日本に何人かは存在しそうだ。ダンナは精神科に通っているという設定だが、その設定以外に細かい描写がないというのが逆に存在感の稀薄さを示す効果をあげている。3人ぐらいを仲介すればこの日本では大体全員がなんらかの知人関係にあるという実態。こういう人間群像ものでも奥田英朗は見事な技をみせてくれる。

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