2008年10月22日水曜日

週刊ダイヤモンド給料全比較(2008年9月13日号)


出版社:ダイヤモンド社 発行年:2008年
 「恒例」といえるかどうか…ただこの手の特集はダイヤモンドは大好きみたいで、わりと頻繁にお目にかかる。ちょうど福田首相が辞任会見をした直後の特集だが、ダイヤモンド社の「独自調査」ということで、家計調査年報などの公式的な出版物などとはまた違う面白さも。建設業や不動産業の落ち込みが目立つのはやはり建築基準法の厳格化の影響と、マンション契約率の低下による部分が多いだろう。市議会議員の平均年収が777万円と意外に低いのは地方自治体の財政状態を反映しているような気がする。東日本高速道路などかつての日本道路公団が民営化・3分割された企業についてはいずれもかなりの高収入。日本高速道路保有・債務返済機構の職員の年収もかなり高く(具体的にどのような数字なのかはぜひこの雑誌で)、旧日本道路公団の債務返済をどこまで真面目にやる気なのかはこのデータからは不明。給料とあわせて平均的な残業時間なども表にまとめられているが、金融機関、特に銀行がさまがわりしている。投資銀行がやや多いかな、という感じがする程度で「持ち帰り」は個人情報保護法に、残業は労働基準法に触れる可能性が高いという時代を反映したものだろう。万が一、融資を依頼してきた顧客情報が漏出などでもしたら、その銀行全体のイメージが大打撃を受けるためと推察される。生産ラインの適正化などをはかるプロセスエンジニアの残業もやや多い。さらに2008年4月に改正されたいわゆる改正パート法についても特集。何某通信会社の国際オペレータ業務のエピソードが紹介されているが、本来は、正社員なみに働くパート社員への差別的待遇が禁止されたもの。流通業ではパート比率が高いといわれており、何某では正社員とパートとの職務等級が統一されている。さらに東京大学卒業生の就職希望もグラフ化されており、右肩下がりが公務員で、その受け皿が金融・保険業。総合商社の人気が相変わらず高いという指摘にも納得できるものがある。
 そのほか、この号では「サクセスフルエイジング」で定期的な運動による肥満や心臓病の防止について、知的能力を落とさない努力、東京大学文学部卒業の石上和敬住職のインタビュー(港区光明寺)、グルジア紛争におけるアメリカの役割、成城石井やクイーンズ伊勢丹のような高級スーパーと総合スーパーのヨーカ堂の新業態の模索(ザ・プライスなどのディスカウント業態)、野口悠紀夫先生の70年代の英国経済と日本経済の比較など、670円の雑誌にしてはかなりのお買い得な一冊で、しかも充実の内容。こういう特集や報道記事ばかりであればさらに経済雑誌の需要ももっと高まるのだろうが…。

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