2008年10月5日日曜日

マドンナ(講談社)

著者:奥田英朗 出版社;講談社 発行年:2005年
 解説を酒井順子さんが書かれており、本を読み終わったあとに酒井さんの解説を読むとさらに面白さが倍増。全員40代の課長が主役で、その心理状況を描写しているのだが、目安としては中~大規模クラスの企業だろう。これ、小規模な事業所だとまた違う展開になりそうな気がする。女性の上司につかえることになった「ボス」、社内行事の運動会をめぐる「ダンス」など表題の「マドンナ」よりも、そっちのほうが個人的には面白い。実際、ほとんど全員参加の社内行事に「参加しない」というのはそれなりに理由と度胸が必要になるが、それをポリシーとして貫く人間と説得する人間の友情というかなんというか、しみじみした味わいがなんともいえない。特に上下関係を超えての昼食での会話の描写がまた上手いんだなあ…。不条理はいろいろあれど、その不条理を今の日本企業で吸収しているクッションがこの小説にでてくるような主人公たち。40過ぎで全員「惑う」わけなのだが、「一定のポリシー」にしたがって惑わなくなったような人間ばかりで構成されている企業は、時代の変化には弱いのではないか…とふと思う。

0 件のコメント: