2008年10月8日水曜日

野口悠紀夫の「超」経済脳で考える(東洋経済新報社)

著者:野口悠紀夫 出版社:東洋経済新報社 発行年:2007年
 経済学の入門の話からさらに具体的な経済事象までかなり高度なレベルの論点が展開される。たとえば格差是正をどうするべきか、といったテーマに対してはオプションがまず税・社会保障政策と補助・価格・規制政策があることが明示され、市場に直接関与しない税・社会保障政策のほうが望ましい経済学的理由が展開される。キーワードがタイトルの下に展開されているのも読み手への配慮だし、問題提起と論点の所在を明確にしてから理由を記述してくれるのも野口悠紀夫教授の読者への配慮だろう。市場介入については資源の最適配分をゆがめるから…ということになるが、理論と実際のズレの理由まで含めて丁寧に著述されており、ミクロ経済学やマクロ経済学の素養がなくても十分読みこなせるように編集されていると同時に執筆もされている。
 ただ内容がかなり高度な分だけ、まずこの本を読む前に一定程度の近代経済学の入門書を読んでおくとさらに読書の楽しみが倍増するだろう。1回読んだだけでは不十分でおそらく2回目、3回目とことあるごとに読み返すと理論の力と現実の変化の両方をさらに深く理解できるような問題提起と理論的説明の展開がなされている好著。

0 件のコメント: