2008年10月25日土曜日

なくしてしまった魔法の時間(偕成社)

著者:安房直子 出版社:偕成社 発行年:2004年3月 評価:☆☆☆☆☆
 大人になってからあらためて読み直すと、その素晴らしさがまた心に伝わってくる。文章を読んでいるうちに心に色彩が浮かんでくるのだが、著者自身もこの全集のエッセイに記されているように「青」や「赤」といった色彩を意識して執筆されたようだ。中でも「空色のゆりいす」という名作は著者が日本女子大学在学中の20歳のときの作品。空を見ることが出来ない少女が心に空のイメージを膨らませていく様子が素晴らしい…
 「さんしょっ子」では、「さんしょっ子」が三太郎を、三太郎が「すずな」を思い続けて声をかけても相手が応えないという場面が切ない(24ページ)。時代は違うが「めぞん一刻」の世界をこの1ページに凝縮したような印象も受ける。すべてが片思いでしかも「すずな」の心の中については著者はあえて描写していないのが、大人になってからはその理由がよくわかる…。
 もうお亡くなりになった安房直子さんの作品集は偕成社からコレクション第1巻~第7巻に編集されて再発売。本の装丁も白地にイラスト入りのとても素敵なデザイン。手にとった感触がまた素晴らしく、定価も2,000円とお買い得。

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