ハイテク企業向けのマーケティングの書籍だが,もはや古典というか定番の書籍。定評は前々から耳にしていたが実際に読んでみると「なるほど」と思う分析理論が満載。よくあるライフサイクル曲線をそのまま鵜呑みにせずに,イノベーター,アーリー・アダプター,アーリー・マジョリティ,レイト・マジョリティ,ラガードと市場もしくは消費者を5タイプに分割し,それぞれの消費者の間には「キャズム」(chasm),溝が存在すると分析。さらにそのキャズムを乗り越えるためにはどうすればいいのか。アーリー・マジョリティの市場に食い込むのにはどういったマーケティング戦略をとるべきかといった分析が述べられている。定価は2000円だが,それをはるかにうわまわるベネフィットは保証付。実利主義者の価値観を理解しないで実利主義者向けの商品を市場に浸透させることはできず,多くのベンチャー企業はそのキャズムを乗り越えられないがために倒産してしまうという多くの事例を裏付ける理論だ。メインストリームの市場の消費者は,不連続なイノベーションを受け入れないという指摘が鋭い。パソコンはタイプライタからワープロの時代をへた上で現在に至るが,GUIになってもさほど違和感なく消費者に浸透していったのは,操作に連続性があったからだとも考えられる。そもそも初期のインベーダーゲームの時代から操作方法に大きな違いがでてきている訳ではない。一定の実用性を確保したあとは「ホールプロダクト」(一種の商品セットやサービスなど)が重要となり,マイクロソフトが一定のシェアを現在確保しているのは,キャズムをさっさとのりこえて,ホールプロダクトの構築ができたことが成功に至った理由ではないかとの仮説も構築できる。で,この本の内容はもちろんハイテク製品なのだが既存の企業で新製品を開発する場合にも応用できる部分がかなりある。自社の消費者が自社にいだいているイメージやこれまでの商品群との「ホールプロダクト」性などは,新商品開発にあたって十分考慮すべきことであろうし,アフターケアなども含めて他の商品やサービスとのシナジー効果なども考慮してメインストリームに切り込んでいくのが正しい経営戦略だということになる。「老舗」の「老舗」たる所以は,老舗ならではの主力商品を中心にホールプロダクトを構築して時代に適応することで,消費の連続性を保ちつつ,変化にも対応していくという姿勢がある点だろう。まだ読んでいない方にはぜひお勧めの実利満載のマーケティング本。いろいろな解説本もでているがまずは本家本元のこの本にいきなり挑戦してみるのが一番効率が高いと思われる。
かなりいろいろな分野の書籍を読みますが、まずはビジネス関連書籍を中心に…なお個人的な☆印ですのであまり御参考にはなさらず…自分の好きな本を読んで好きなように活用していただく一助になればと思います。現在合計で2143冊の書籍についてアップロードしています_¢(0-0ヘ)。そろそろ「タグ」をまめにつけて整理していこうかな、と考えています。順不同ですがそのうちに分類基準を決めていきます【^_^】 「濫読」ではあるのですが、定期的に 1.民法・会社法 2.財務会計 3.近代経済学 4.流通・マーケティング 5.世界史関係 の書籍は読むようにしています。
2008年8月5日火曜日
キャズム(翔泳社)
ハイテク企業向けのマーケティングの書籍だが,もはや古典というか定番の書籍。定評は前々から耳にしていたが実際に読んでみると「なるほど」と思う分析理論が満載。よくあるライフサイクル曲線をそのまま鵜呑みにせずに,イノベーター,アーリー・アダプター,アーリー・マジョリティ,レイト・マジョリティ,ラガードと市場もしくは消費者を5タイプに分割し,それぞれの消費者の間には「キャズム」(chasm),溝が存在すると分析。さらにそのキャズムを乗り越えるためにはどうすればいいのか。アーリー・マジョリティの市場に食い込むのにはどういったマーケティング戦略をとるべきかといった分析が述べられている。定価は2000円だが,それをはるかにうわまわるベネフィットは保証付。実利主義者の価値観を理解しないで実利主義者向けの商品を市場に浸透させることはできず,多くのベンチャー企業はそのキャズムを乗り越えられないがために倒産してしまうという多くの事例を裏付ける理論だ。メインストリームの市場の消費者は,不連続なイノベーションを受け入れないという指摘が鋭い。パソコンはタイプライタからワープロの時代をへた上で現在に至るが,GUIになってもさほど違和感なく消費者に浸透していったのは,操作に連続性があったからだとも考えられる。そもそも初期のインベーダーゲームの時代から操作方法に大きな違いがでてきている訳ではない。一定の実用性を確保したあとは「ホールプロダクト」(一種の商品セットやサービスなど)が重要となり,マイクロソフトが一定のシェアを現在確保しているのは,キャズムをさっさとのりこえて,ホールプロダクトの構築ができたことが成功に至った理由ではないかとの仮説も構築できる。で,この本の内容はもちろんハイテク製品なのだが既存の企業で新製品を開発する場合にも応用できる部分がかなりある。自社の消費者が自社にいだいているイメージやこれまでの商品群との「ホールプロダクト」性などは,新商品開発にあたって十分考慮すべきことであろうし,アフターケアなども含めて他の商品やサービスとのシナジー効果なども考慮してメインストリームに切り込んでいくのが正しい経営戦略だということになる。「老舗」の「老舗」たる所以は,老舗ならではの主力商品を中心にホールプロダクトを構築して時代に適応することで,消費の連続性を保ちつつ,変化にも対応していくという姿勢がある点だろう。まだ読んでいない方にはぜひお勧めの実利満載のマーケティング本。いろいろな解説本もでているがまずは本家本元のこの本にいきなり挑戦してみるのが一番効率が高いと思われる。
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