2008年8月17日日曜日

日本共産党(新潮社)

著者名:筆坂秀世 出版社:新潮社 発行年:2006年
 新潮社はこのほかにも「創価学会」という新書を出しているが,なかなか触れにくいテーマを新書サイズで思いきった著者起用で出版。「新書」が売れる時代にふさわしい出版ともいえるが,他の出版社にはなかなかできないワザを見せてくれる。細かい事実経過そのほかについては立場によって異論もあるようだが,これまで知られなかった事実が公開されているというのは間違い事実。党費についても実収入の1パーセントというのは初めて知ったのだが,それ以外に党員の方々は「赤旗」や雑誌の購入も必要というだけあって,なかなか財政的には苦しいのは想像がつく。「給与遅配も珍しくない地方組織」というのも「ありうるなあ」と思ってしまった。74ページには電話による選挙運動が著述されているのだが,これも実際に私個人は受けた記憶があり(他の政党もあるので特別にこの政党の問題だけではないが),一部の党員に負荷が集まるという指摘にも納得できるものがある。あとは考え方や路線の問題については部外者からはコメントできるものではないので,ただ「読んだ」としかいいようがないが…。創立84年の老舗の政党ではあるが,さすがに路線変更そのほかや組織の維持体制,さらに「細胞」という独特の活動なども路線変更がせまられているように感じられる。とはいえ2006年発売から若干動きが変わってきたのは「蟹工船」がベストセラーとなり,若手の加入が増えたということだが…。「対立軸」が体制というよりも現実主義的な経済政策や社会保障のあり方ということになると,やはりこの政党のもつ政策のリアリティには相当に疑問符がつくのは事実。あとは選挙を重ねて政党政治の図式が変化していくのを待つ事になるだろう。680円の新書だが,「知らない世界」を知る手がかりにはなるとは思う。

0 件のコメント: