2008年8月19日火曜日

動機(文藝春秋)


著者:横山秀夫 出版社:文藝春秋 発行年:2002年
 文庫本化されたのが2002年で購入したのは,2005年3月5日第20刷…。横山秀夫ファンが数知れないほど多いことを実感させてくれる数字だ。日本推理作家協会賞受賞。署内で一括管理される30冊の警察手帳が紛失するという事件をめぐり,その真相にたどりつくと…という展開。警務部と刑事部の対立なども細密に書き込まれて,読んでいくうちにどんどん横山ワールドに引き込まれていく。ミステリーではあるのだが,厳密な「仕掛け」にこだわるというよりもやはり個々の人間の個性とその「からみ」の描写が非常にうまい。「密室の人」という短編が最後に収められているがどろどろの人間関係の中から一筋の光がさしてくる終わり方になっている。「救いのない展開」というのもミステリーであれば当然ありうるが,人間模様の中に常に救済の光と暖かい視点がかいまみせるのがまた横山秀夫氏の作品の魅力ではないか。

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