2011年8月27日土曜日

人たらしの流儀(PHP研究所)

著者:佐藤優 出版社:PHP研究所 発行年:2011年 本体価格:1100円
かつてのソビエト連邦がグラスノスチから民主化へ大きく舵取りをきる時期に、保守派(この場合には共産主義者)のクーデターが発生した。日本のメディアも大きく報じたが、それぞれの新聞で情報入手で大きな差が生じた。A新聞の見出しはその後も話題になったが、共産主義国家が復活しそうな勢いだったが、その一方で冷静にインテリジェンスを働かせてゴルバチョフの生存を確認した外務省主任分析官がいる。それが後に「外務省のラスプーチン」ともよばれ、起訴休職することになる著者である。読書の方法やインフォメーションとインテリジェンスの違い、ディナーとランチの違いなど生きたインテリジェンスが掲載されており、非常に興味深い。同時にノンキャリアでありながら、これだけの読書量と活動履歴を残した著者の実力の高さがしのばれる。国会議員との蜜月が逆に足をひっぱった形だが、その後大量の著作を出版。そのいずれもがそれなりに話題となり売れ行きを示しているのも、単なる暴露話や回顧録ではなく、危機に直面し、それを乗り切った著者の経歴そのものが時代に必要とされているからではないか。タイトルは「人たらし」となっているが、実際には、「危機管理」の本といえるだろう。ちなみに担当編集者は元集英社の小峰隆生さん。この編集者もいわば異能の編集者だ。

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