2010年5月9日日曜日

ドル凋落(宝島社)

著者:三橋貴明 出版社:宝島社 発行年:2010年 本体価格:648円 評価:☆☆☆☆☆
 市井の経済アナリスト三橋貴明氏。「あたるあたらない」ではなく、データと用語の定義を緻密に行い、目の前にあるデータからありうべき分析を示すという方法はまさしく市井のアナリスト。そしてその着眼点はやはり鋭い。この本ではユーロ圏のギリシアなどPIGSとよばれる国々の経済分析のほか、アメリカの長期金利が上昇しない理由、中国とアメリカが完全対立するわけにはいかない理由などがわかりやすく説明されている。日本の2007年までの好景気も国内の需要よりもアメリカの需要によるものが大きかったことがわかりやすく説明されており、なるほど「好景気」とはいってもその実感が国内ではあまりわいてこなかった理由もよくわかる。
 タイトルこそは「ドル凋落」ではあるが実は最終的な結論は「ドル基軸通貨制度は簡単には凋落しない」というのが著者の見解で、こうした結論とタイトルのつけ方も見事。現在はまだ新書サイズの書籍が多いが、いずれはハードカバーの単行本なども多数出版しそうな予感がする三橋氏。この世代の経済評論家が30代、40代の立場で日本経済にコメントを発していくのもまた必要なこと。今後のさらなる活躍が期待される。

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