2010年5月29日土曜日

贖罪の日(講談社)

著者:クリス・ムーニー 出版社:講談社 発行年:2008年 本体価格:781円
 科学捜査官ダービー・マコーミックは15歳のとき(1984年)、友人が殺害された事件に遭遇、その23年後の2007年に女子高生誘拐事件に遭遇。ボストン市警の事件担当者となる。最初から最後まで憂鬱な雰囲気が立ちこめ、10代の思い出あるいはフラッシュバックに苦しみながら、38歳の女性捜査官が重大な事件に立ち向かう…。「あのとき生き延びられたのだから今回も生き延びられるはず」という前向きな思考を言い聞かせる場面とラスト(これぞ衝撃のラスト)が感慨深い。一見何の関係もない被害者の特徴もラストの種明かしで「関係がなさそうに見える点がまさしく犯人の狙い」だったとわかる秀逸なミステリーとなっている。登場人物の心理描写も見事だし、真犯人も途中でわからなくはないのだが、それを上回る「種明かし」の仕組みも見事。そしてまた派手なアクションや爆発シーンも盛り込まれ、アンジョリーナ・ジョリーあたりが主演で映画化すればさぞかし面白い映画になるであろうことは間違いない。苦痛をベースに、一点の「希望」。続編はアメリカではすでに刊行されているらしいが、日本ではまだ翻訳されていない。この続編、本当に楽しみである。

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