2010年5月25日火曜日

隣の家の少女(扶桑社)

著者:ジャック・ケッチャム 出版社:扶桑社 発行年:1998年 本体価格:686円
 1958年。まだ10代だった「私」を41歳の「私」が回顧する。隣の家に引き取られてきた美少女メグとの出会いから始まる惨劇。これ映画化されるらしいのだが、はたして主役を誰がやるのだろうか…。途中から微妙な不協和音がかもし出され、ラスト間際では吐き気すら覚えるほどの描写が続く。「私」の心がどこか破壊されてしまったのは間違いなく、平凡にすごしてきたかのように思える人生そのものがすでに終わっている。
 スティーブン・キングがこの作品を高く評価しているというその理由が実はよくわからない。10代や20代前半を奇妙に美しく描写するのが青春マンガや青春映画の常套手段だが実際にはそれほど美しくはない10代の「陰」ともいうべき断面がある。その断面を拡大していくと確かにこういう作品に仕上がるが…。この作品はまだ携帯電話も残虐な「ゲーム」(RPG)も存在しない時代を描写している。おそらくコンテンツの残虐さが実在の青少年に与える悪影響というのは実際にはほとんどないだろう。人間が抱え持っている邪悪さを自分自身が認識することによって、初めて人間は「悪」と「善」を区別して行動することができる。健全な社会人とはおそらく「地獄」と「天国」の両方を知り、自分自身で「選択」できる人間だ。こういう本がもしかすると将来は読めなくなる時代もくるかも知れず、そしてそういう時代こそ本当の「悪」が日常生活にしのびよってくる予感がする…。

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