2010年4月11日日曜日

公務員大崩落(朝日新聞出版)

著者:中野雅至 出版社:朝日新聞出版 発行年:2009年 本体価格:780円
 国家公務員と地方公務員の両方を経験した現役の学者が執筆。著者自身のキャリアから割りと中立公平で、しかも現場の重みや実感が伝わる内容になっていると思う。
 公益法人の改革は民法改正などで割合進んだが、この本で指摘されている「独立行政法人」や第三セクターについては確かに今後厳しい見方が広まるかもしれない。公務員の数そのものが多いとも少ないとも個人的には考えておらず、経済状況によって柔軟に運用していくべきだとも感じている。ただ柔軟に運用するということは、逆に考えると終身雇用制とは裏腹に各省庁の既得権益などには縛られない人数の変動や各省庁共通の人的管理にもつながる(経済産業省に人を多く配分したほうがよい時代もあれば、環境省に多く人を配分したほうがいい時代もこれからあるだろう)。だから「崩落」していくというよりもこれから「これまでは当然だったシステム」が「別のシステム」に生まれ変わっていく過渡期と考えたほうがよいのかもしれない。すでに中央省庁のキャリア組の転職(MBAを取得したあとの外資系コンサルティング会社などへの転職)はわりと話題になっているうえ政界への転身組も増えてきている。キャリア志向の若者はひとつのステップとして中央省庁をみなしていく可能性もあるし、最初から外資系などで実力を磨いていく時代が当然のことのようになっていくのかもしれない。そういう時代に昭和の「おいこら」的行政指導では確かに国家の運営そのものが成立しなくっていくのも当然だろう。

 だが…「崩落」していく「速度」はおそらく「公務員」の世界ではなく「民間企業」のほうが速いかもしれない。すでに民間企業では消滅しかかっている終身雇用制や年功序列制度が残存している「公務員」の世界に対して、民間企業は「次」のステップへ向けて新たな「崩落」を開始しつつある。この本に書かれている予測が実現する時代には、また別のシステムが民間企業で進行している可能性はかぎりなく高い。朝日新聞ですら赤字に転落して新聞市場が縮小傾向にある時代だ。政治や行政の世界よりもマスメディアや一般事業会社の「崩落」「再編成」の動きのほうが速く、またその後に「政府」がついていくというスタイルには大きな変化はないと思われる
 

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