2010年4月25日日曜日

イエスの古文書 上巻(扶桑社)

著者:アーヴィング・ウォーレス 出版社:扶桑社 発行年:2005年 本体価格:819円
 1990年に亡くなったアーヴィング・ウォーレスのこの作品が再び2010年の書店の本棚に並び始めている理由。やはり「ダビンチ・コード」の影響によるものとしか考えられない。さらにこの本では複雑な人間関係と宗教団体との対立関係の基軸に「新しく発見された福音書」を題材として設定している。イエス・キリストが実際にはどの場所で何歳まで生きて、そして地理的にどこまで福音活動をしていたのか。実弟ヤコブの福音書は本物なのか。広告宣伝業界の若手ランダルはいかにして出版機密を保持して広告宣伝活動をおこなっていくのかといったミステリー仕立ての小説。基礎的な知識(現在の聖書は一定程度の編集が加えられたものでいわゆる外伝の福音書が他にもあることなど)があれば、さらに興味深く読み進めることができる。物語の始まりはやや「唐突」すぎる話でまっとうな人間であれば一笑に付すような展開だが、実際に「校正刷り」が出回り始め、さらにはその出版が現実味をおびていくにしたがって、物語の緊張感が増していく。登場人物の女性の会話の文体などがやや気にはなるものの、まだ何も「事件」が発生していない上巻でここまで熱中して読ませてくれる歴史ミステリーは貴重。

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