2010年4月27日火曜日

テンプル騎士団の古文書 上巻・下巻(早川書房)


著者:レイモンド・クーリー 出版社:早川書房 発行年:2009年 本体価格:740円
 2005年にアメリカで出版された歴史ミステリー。メトロポリタン劇場で開催されたヴァチカン至宝展。そこにあらわれた4人の騎士団が暴虐のかぎりを尽くして立ち去るが、その現場には女性考古学者のテスが居合わせていた…。テンプル騎士団というと「うさんくさいと思われる」と登場人物の一人がいう。エルサレムで9年間ナゾの発掘作業をしてフランスで時のフランス王と教皇によって虐殺された騎士団。13日の金曜日の本来のいわれもこのテンプル騎士団とされている。だがこの騎士団の数奇な運命はいろいろな憶測を可能にする。ソロモンの神殿(temple)でいったい何をしていたのか、ひょっとすると何かの宝物を入手したのではないか…などなど。為替業務にも関係していた…ということから暗号へ。そして解読へ…と話は進むがいかなるアルゴリズムだったのかは実は最後まで明らかにされないまま。あまりそうした細部にはこだわらないで話を進めていくのがこのレイモンド・クーリーたるゆえんかもしれない。そもそも出だしからラストまでどことなくハリウッド・ムービーを思わせる展開で、盛り上がったあとは急に静かなリズムとなったりする。読み始めたらやはり最後まで一気に読んでしまう歴史ミステリだが、その手法は、「ダビンチコード」ではなく、ハリウッドに由来するものとみた。それにしても歴史ミステリというジャンル、これまで本当に無関心だったのだが、けっこう読んでみるとなかなか面白い作品ばかり。ハイテク機器と古文書といういっけん相対立するものが並列になっているのもまた個人的に興味深い。

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