2010年4月28日水曜日

アメリカ、中国、そして日本経済はこうなる(ワック株式会社)

著者:日下公人 三橋貴明 出版社:ワック株式会社 発行年:2010年 本体価格:933円
 かなりのベテランのエコノミストと中小企業診断士出身のウェブ発のエコノミストの対談集。いや、面白い。日下氏自身が日本長期信用銀行時代から異色のエコノミストといわれていたが、かつてその文庫本で「なぜお茶が自動販売機で販売されていないのかが不思議だ」と語っていたことがある。当時はお茶を自動販売機で販売するという発想がなかったためだが、今ではもう定番商品。あたりまえのことを普通にさりげなく指摘するというのがとても大事で、それがお二人とも得意なエコノミストだから、アメリカ・中国・日本を題材として扱っていてもそれほど両者で対立する場面は少ない。ただ国債発行の負担に関しては世代間闘争めいた対談もあったが。
 中国の経済成長については両者とも悲観的でアメリカが今後もそれなりの影響力をもつというあたりが一致。国内問題では世代間負担について考え方が異なるといったところか。私は三橋氏の立場に共感するが。対外純資産をもちすぎると国際経済でたたかれるという指摘にはもっともな気がする。ただしネットワーク化した現在で、対外純資産をふみたおすために戦争をする…というような事態が発生した場合にはまた19世紀から世界史を繰り返さなければならないといった気も。これは日下氏がやはり高齢すぎたからでてきた意見かもしれない。ともあれ、時代の変わり目にかつての市井のエコノミストと堂々とわたりあい、今後の展望を描写してくれる若きエコノミストの誕生は喜ばしい。

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