2010年4月11日日曜日

敵は我にあり 上巻(KKベストセラーズ)

著者:野村克也 出版社:KKベストセラーズ 発行年:2008年 本体価格:676円
 今回読んだのは新装版。実は昔発行されたバージョンも読んだのだが、今回装丁が新しくなったということで読み直し。いや面白い。「美しいものは機能的」という建築家の言葉を引用して守備陣形を解説するなど、野村元監督ならではの「わかりやすさ」がこめられている。「不器用は強い」などすでに名言として確定している種々の言葉がこのエッセイにはこめられているが、新装版として復活したのは、阪神の監督を退任されたあと、社会人野球をへて楽天球団で2位に快進撃した実績が読者に訴求したのだろう。いろいろな状況をふまえつつも集中する…という野球のエッセンスは大企業のビジネスパーソンにももちろん有用だろうが、中小企業であれこれこなさなくてはならないビジネスパーソンや中間管理職にはさらに応用可能な場面が多いのではないかと思う。どうしてもジャイアンツのような伝統ある老舗球団は大企業的な人材起用になるが、ヤクルト、阪神、楽天はいずれも弱小球団。かつて阪神で、左打者のワンポイントに遠山投手、右打者にかわってから葛西投手という系統が多かったが、できうるかぎりの解決策をみつけていこうという姿勢がよい。雰囲気を明るくするためにベンチ入りさせたというエピソードも紹介されているがそれは後年ヤクルトの監督をされていたときの金森コーチの起用にもつながるものを感じる。昭和のプロ野球の総括にもなるが、ひとりの名選手の原点を凝縮したような名作文庫本になっている。写真が2009年のものにさしかえられつつも今なお示唆に富む内容が名作の名作たるゆえんか。

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