2010年4月10日土曜日

「夜のオンナ」はいくら稼ぐか?(角川書店)

著者:門倉貴史 出版社:角川出版 発行年:2006年 本体価格:686円
 やや統計データそのほかが古びてきてはいるのだがそれでも面白いこの「裏GDP」の分析。ある国への経済面での注目度が高まると文化面への興味が高まるという指摘(56ページ)など興味深い指摘が多い。統計データは待ち行列理論などを多用し、なるべく信頼度を高める努力を著者が試みようとしている姿勢も評価できる。もともと公的データが「ない」分野のため、類推や憶測に頼らざるをえない部分が多くなるのも当然だ。この本を読むとたとえば「スラムドッグ ミリオネア」(ダニー・ボイル監督)がアカデミー賞を受賞する「流れ」も当然のように思えてくる。ムンバイの映画村が「ボリウッド」と称される背景も理解できるし同時に「スラムドッグ」のラストシーンにもうなづけるものがでてくる。
 需要と供給の分析で「需要面」で「倒錯」した客が増えてきたのが価格の切り下げにつながってきているという指摘が面白い。新境地を開拓したいという需要側に対して供給側が追いつかない(あるいは多様性についていけない)という冷静な分析だが、誰もが等しく同じサービスを享受する…といった時代ではない以上、こうした「夜のビジネス」もマーケティングが必要になってきたということだろう。巻末には世界の裏ビジネスの状況の紹介や人身売買の実態なども特集されている。

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