2011年5月6日金曜日

エネルギー 下巻(講談社)

著者:黒木亮 出版社:講談社 発行年:2010年 本体価格:762円
つくづく自分はシリーズものに弱い。黒木亮の小説でも分冊構成の本のほうがなんだか楽しい。普通は逆なのだろうけれども。サハリン計画はロシアのプーチン大統領の政策や環境問題などにより、周知の事実で頓挫する。この本はノンフィクションではあるが、サハリン計画という時点ですでに「成功小説」ではないことがあらかじめ読者に通知されている。その結末に向けて、合併吸収された総合商社の人間、環境問題に取り組む妹とオホーツクで漁業を営む兄をもつサハリン計画の担当者、国会議員に転進した元経済産業省の課長といった主要人物の苦闘を描写。物語はラストまで一気に読ませる構成だが、もう一人の主要な登場人物であるコモティティ・トレーダーの「秋月」の結末は、あまり詳細には書かれていない。おそらく続編かもしくは別の作品にも顔を出すのかもしれない。巻末には経済用語の辞典が掲載されており、単行本であれば、参照しながら読み進めることができるように配慮されている。参考資料の膨大さも印象的だ。

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