2009年10月31日土曜日

戦略「脳」を鍛える(東洋経済新報社)

著者:御立尚資 出版社:東洋経済新報社 発行年:2003年 評価:☆☆☆☆☆
 わりと浮き沈みの激しいビジネス書籍の中では2003年発行以来のロングセラーかつ名著とされている戦略学の本。文学部出身の著者らしい「脱構築」(デコンストラクション)という概念を競争戦略の中に持ち込んでいる部分が興味深い。理論だけだとどうしても読み手も文字をうわすべりに読んでしまうが実例や文学や歴史などのエピソードが織り込まれていると理解も早い。著者はこの本で「インサイト」(洞察力)という概念も提唱しているが、街のお弁当屋さんにしてもアイスクリーム屋さんにしてもはやっているお店とそうでないお店の両方がある。その違いをさらに自分の業界に転用できないかどうか…といったインサイトこそが重要な考え方だと主張しているように思える。
 ボストンコンサルティンググループの東京事務所には「多様性からの連帯」という言葉が飾ってあるというが文学部、工学部、経済学部とさまざまなジャンルの専門家が多種多様なインサイトをぶつけあってオリジナルのコンサルティングをおこない他のファームと差別化を図っているのだろう。名著といわれるのにふさわしく、一回だけでなく二回、三回と読み直し、さらに日常生活の中でいろいろな形でこの本のエッセンスを活用していきたくなる本だ。

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