2009年6月14日日曜日

「未納が増えると年金が破綻する」って誰が言った?(扶桑社)

著者:細野真宏 出版社:扶桑社 発行年:2009年 評価:☆☆☆☆☆
 情報処理でよく使うフローチャートにもとづく「なぜ」といった論理思考を重視する本。フローチャート自体は答えを出すのにはけっこうグチャグチャでもいいのだが、そうしたスパゲティ・プログラムではなく著者がめざしているのは構造的プログラミングにもとづいたシンプルなフローチャートで説明できる「ものの考え方」。まず一定程度その訓練をすると少ない知識でもあとはその組み合わせで色々な問題を「解く」ことができるというのが著者の主張だ。一種の「社会的影響」でバブルが発生する仕組みも論理的に解説されているので株式投資などをする人はよく読んでおくと一過性の株価の動きにまどわされずに済むと思う。またアメリカの低金利政策と住宅投資、サブプライムローンとの関係、アメリカにおけるリファイナンスの問題点も非常にわかりやすい。で、国民年金の未納率の問題だが、国民年金には厚生年金に加入している第2号被保険者がいるがこれは源泉徴収だし、その配偶者は第3号被保険者なので同じ、とすると問題になるのは第1号被保険者の「未納分」だがそれは約1,600万人のうちの未納分。しかし年金制度全体からすると共済年金や厚生年金ではよほどのことがないかぎり未納は発生しないので、年金制度が未納によって破綻することはない…という理屈だ。今年度からは高齢者に対する年金の半分は税金負担となるのでさらに個人負担が減少するとともに未納者に対しては今後年金給付の受給権が発生しないので他の人間に負担のしわよせがいかないことも説明されている。もし全額税方式にした場合には現在の社会保険料は最低でも企業と労働者個人が5:5の比率で支払うことになるが、税金方式だとその分企業のコスト負担が減る(その分労働需要が増加するというメリットもあるだろうけれど)。非常に分かりやすい解説でコトの本質は年金よりもむしろ医療・介護関係のコストの増加にあることが浮かび上がってくるという構成。メリハリが利いた説明と図で著者の主張もN新聞の主張も非常に心地よい感じで読み進めることができる新書。これが定価700円というのはお買い得だろう。

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