2009年6月13日土曜日

経済は感情で動く(紀伊国屋書店)

著者:マッテオ・モッテルリーニ 出版社:紀伊国屋書店 発行年:2008年
評価:☆☆☆☆
 すでにベストセラーとなり第2作も出版されている行動経済学の入門書。ただ分かりやすさという点では、「予想どおり不合理」(早川書房)のほうが上で、同じ内容でもこちらの本のほうがやや難しく説明されている。また伝統的なミクロ経済学の枠組みが頭に入っていないと、クイズ形式の本文の何が伝統的な経済学の答えで何が行動経済学の成果なのかも区別しづらくなってくるだろう。基本目標は人間が感情的になるがゆえにおかしやすいミスを判別し、非合理なミスをしないこと。個人的には選択肢が多数あるときの人間の意思決定の問題が興味深かった。「選択肢が多いほど判断を先延ばし」にする傾向があるというが、好景気のときの新卒はまさしくそうした状況になるかもしれない。内定が早くでたからといっても選択肢そのものは多数あるわけだから、結局最後まで内定をいくつもとってかえって混乱してしまうことだってある。判断を先延ばしにしすぎると葛藤が深まり判断能力が鈍るというのも判る気がする。また人間が否定的な側面に注目するというのも確かにあたっているような気がする。どこの会社にもいいところと悪いところがあるはずだが、大抵いい面は見過ごされ、悪い面がクローズアップされる。しかし実際にはいい面も悪い面も両方とも勘案しないと全体像が見えてこないというのも事実。お金の価値は一定というのが幻想だとかどちらかというとマクロ的な分析能力よりも、ミクロな日常生活に大きな効果がある本だと思う。これからしばらくはこうした書籍は売れ続けるに違いないが、それでもしかしあらかじめ限界効用や限界効用低減の法則など伝統的な枠組みはしっかり理解しておいたほうがベターだろう。

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