2009年6月9日火曜日

町長選挙(文藝春秋)

著者:奥田英朗 出版社:文藝春秋 発行年:2009年 評価:☆☆☆☆
「イン・ザ・プール」「空中ブランコ」に続く精神科医伊良部シリーズの第3弾。このシリーズは読んでてなんだかほっとする。ある意味異常なのはこの精神科医とその看護士なのだが、訪れる患者がその「異常さ」によって逆に救済されていくという妙な筋書きになっている。別に「一貫性」など人生においてはさほど重要性はないとかこれまでこだわってきたコミットメントには何も意味がなかった…とかそうした「気付き」を患者も読者も伊良部によってもたらされる。そもそも権威や権力といった上下関係からも縛られずに生きているのがこの主人公なので、現実にはかなりなまぐさい「選挙」やプロ野球再編問題などが力をぬいてみていけば「なんてことないじゃん」と割り切ることさえできる…と読者までが読んでいるうちにそう思ってしまう。ネタはまだまだあるだろうし、この伊良部に登場してほしい場面や地域はたくさんある。第4弾の発売が待ち遠しい…。

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