2009年6月1日月曜日

予想どおりに不合理(早川書房)

著者:ダン・アリエリー 出版社;早川書房 発行年:2008年 評価:☆☆☆☆☆
 行動経済学の入門書。「入門書」的な行動経済学の本は多数あるが、この本が一番面白くしかも理解しやすい。この本を読んでから「経済は感情で動く」などを読んだほうが入門者にとっては理解が深まるだろう。著者(とその友人たち)の考え出した実験の数々も興味深い。被験者はいずれもハーバート大学やMITの学生たちだが、世界的にトップクラスの知性をもつ学生でも「予想通りに不合理」な行動をとることが実際の実験データで示される。「相対性の真相」というのは実生活でもいろいろ使える論理で「比較の基準」(参照点)が明示されていると、経済的には不合理であっても消費者は比較の基準が明示されている商品を選択する。これは「合コン」などでも比較の参照点として自分よりも「容姿が劣る同性」を連れて行くと自分が実際よりもよくみえる…といったケースで頻繁に日常生活でも見られる光景だ。もちろん売り手も経験則としてそれを知っているから特売品をいかにはかすか、ということについて価格の設定や「おとり商品」の設定などに気を配る。「扉をあけておく」というのはたくさんの可能性に目をむけているとかえって大きな便益を失うという理論。「決断しないことの影響」など扉が2つの場合に迷っている場合のロスも考慮に入れておくべきだろう。似通った干草の山を選ぼうとしているうちにロバは悩んでいて餓死してしまった…といった非常にわかりやすい比喩で行動経済学のポイントをおさえることができる。この内容で定価1,800円のこの本はやはり相当なお買い得で、もっと売れてもいいと思う。個人的には「超お勧め」。

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