2008年11月16日日曜日

裁判官の人情お言葉集(幻冬舎)

著者:長嶺超輝 出版社:幻冬舎 発行年:2008年 評価:☆☆☆☆
 これからの司法改革ではどうもA4数枚程度の判決文に短縮化・簡素化される可能性が高いようだ。司法については判決と判決にいたる理由を簡潔かつ明解にする方向なのかもしれないが、そうすると判決に関係ないこうした「人情お言葉集」なども少なくなっていく可能性はある。実際に裁判所で判決文を読み上げられるような経験はないのだが(また今後もあまり経験したくないが)、法治国家で犯罪もしくは権利の衝突が発生した場合には、やはり裁判所の判断が最終的な法律的解決の「結果」ということになる。システムとしてはそうなのだが、機械的に割り切っていくとどうしても割り切れない端数の部分がでてきて、その端数の部分を表現するのがこうした人情的なお言葉だったりするのかもしれないのだが。有名な財田川事件の判決文と再審請求による確定判決のひっくりかえしの難しさ、覚せい剤取締法0・03グラムのエピソード、仮釈放という言葉の定義と厳罰化の流れ、リフォーム詐欺師が子供を抱きかかえてなく場面、無理心中を図った青森地裁の事件…いずれも事件そのものがデジタルに処理するのが非常に難しく、かつ人生の転換点にある刑事事件の被告の今後の「改悛」「更正」といった観点からすると、判決文以外のこうした「お言葉」。実は読んでいる読者の心にも響くものが多数ある。

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