2008年11月24日月曜日

連合赤軍「あさま山荘」事件(文藝春秋)

著者:佐々淳行 出版社:文藝春秋 発行年:1999年
 警察庁のキャリア組から当時の後藤田正晴長官の命令を受けて「あさま山荘事件」に派遣された佐々淳行氏による事件の回想記録。もちろん一個人の回想録であるから、立場が違えば同じ事件であっても違う見解が存在するであろうことは想像できる。しかし、当時の捜査体制などが実名をあげて述べられており、その20年後、30年後にもいろいろな示唆を与えてくれる著書にはなっている。解説はもとフジテレビのアナウンサーの露木茂氏。現在国民新党を率いる亀井静香氏や狙撃された国松元長官も広報課長として登場。事件の大きさと当時のエース級の人材が投入されたことがわかる。連合赤軍の起こした事件の中でもこの「あさま山荘」事件と数々のリンチ事件を総称した「山岳ベース事件」は、その残虐さゆえに後の世代にも新左翼運動への拒否感を植え付ける事件になるとともに、なぜゆえに人間がそこまで教条的に「残酷になれるか」を考えさせる実録になっている。106発の銃弾を発砲し、3名の死亡者と多数の怪我人を出したこの事件は、21世紀になっても色あせる部分がない。分派主義なる「反執行部」的な言動をとるだけでリンチにあい、凍死させられたメンバーや、罪のない警官に銃撃を繰り返した当時の犯人たちはいずれも10代後半から20代。シンプルな革命理論でシンプルに行動主義に走った結果なのか、あるいは人間一般に状況によってはこうした残虐さを仲間内にも発揮するものなのか。被害者の方々にはまだ御存命の方も多く、この事件に関連した書籍もまだこれから多数出版される可能性はある。もちろんそれはこうした事件を繰り返さないように、ということだが、万が一同じような事件が発生した場合の問題解決方法をさらに練り直していく材料ともなる。実録「危機管理」という副題がついているが、著者もこの著作物の一部に「ベストの選択」ではなかったことを認めるようなニュアンスがラストにある。「次」が起こってはもちろんならないが、同様のアクシデントが万が一発生した場合の管理する側、組織として行動する側が材料にしてよんでいくのに豊富なデータを提供してくれる書籍である。

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