2008年11月25日火曜日

崩れる(集英社)

著者:貫井徳郎 出版社:集英社 発行年:2000年
 「結婚にまつわる八つの風景」とあるが、結婚生活というより家庭生活そのもの、もしくは日常生活にひそむ「怖さ」を「生活臭」や「音」などの題材を用いて表現した8つのアンソロジー。表題の「崩れる」はもちろん家庭の崩壊と「再生する希望」の両極端が同居している不可思議な短編集だが、読後、なぜかソーメンを夏場に作る苦労って大変なんだよな、と独白したくなる。個人的に一番気持ち悪かったのはやはり「憑かれる」。「男をダメにする女」の同級生の新婚をめぐる話だが、これがリアリティあって怖い。ミステリーというよりも怪奇小説、あるいは学生時代の罪悪感がそのまま現実に表出してきた悪夢小説といった感じだろうか。読み始めると最初の一話から八話まであっという間に読み終わり、さらに桐野夏生氏のまた素晴らしい解説で
本書の魅力にあらためて浸れるという趣向の文庫本。ブルーの表紙もお洒落なこの1冊、計算しつくされた構成が巧い。

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