2008年11月25日火曜日

急に売れ始めるにはワケがある(ソフトバンク文庫)

著者:マルコム・グラッドウェル 翻訳:高橋啓 出版社:ソフトバンク クリエイティブ株式会社 発行年:2007年 評価:☆☆☆☆
 文庫本で手軽に読めそうな感じにみえるが実は相当に難解な本。書いてある内容はきわめて興味深く、なぜゆえに一部のアーリーアダプタだけが使用していた商品がある瞬間に、爆発的に売れるようになるのかを考察した本だ。もちろん商品そのものの性能や品質には問題はないどころかいずれも素晴らしい商品だがそれは一次的な商品特性としてあたりまえかもしれない。二次的な商品の意味づけがかなり時代やクチコミによって変化し、それが商品の売れ行きを左右しているという見方もできる。「背景の力」というのは自分なりに解釈すると商品を通じてイメージされる二次的な商品特性が特定のタレントなり知人なりによって意味が変化したせいではないかと思う。他人を通じて記憶を蓄えるという概念もいわばキーパーソンがいて(バズを持っている人)、その人が特定分野の商品の二次的特性を変化させる力があるということだろう。ネットワークとはいわば、そうしたクチコミ(バズなど)の相互交流の場であり、そのネットワークで一定の二次的商品特性を与えられた優れた商品のみが、売れていく…と考えられる。こうした分析はある意味ではアナログで、特に商品特性を一次的・二次的に分けて考えるのはちょっと古い分類かもしれない。しかし、商品特性といった場合、いきなりこうしたネットワーク理論をからめた商品分析の本に入るよりもまず商品特性の古典的な分類を下地にひいてから読み始めたほうが、この本の内容を理解するのには便利ではないかと思う。文庫本ではあるがきわめて硬派で、しかもかみくだいて理解していけばきっと役に立つこと間違いなしの本。

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