2008年11月16日日曜日

AV女優2(文藝春秋)

著者:永沢光雄 出版社:文藝春秋 発行年:2002年 評価:☆☆☆☆☆
 筆者の永沢光雄さんは、かなりフリーランスのライターとして活躍されるも、その文章が評価されたのはかなり遅咲きの30代後半ではなかったかと記憶している。このシリーズの第1弾「AV女優」の単行本の内容が発行当時に高い評価を受け、その後「風俗の人たち」など、独特のインタビュー構成と文章のトーンで急激に「売れ始めた」方だった。その後、喉頭がんでインタビュアーとしての大事な道具「声帯」を失い、さらに肝機能障害で2006年に47歳でお亡くなりになられている…。この「AV女優2」を読むのも実は辛く、買おうかどうしようか迷った末に購入。一気に読み通す。1996年から1999年にかけてアダルトビデオ界で活躍した女優36人のインタビュー集だが、永沢光雄さんは暖かいまなざし、かつ独特の視点から36の物語を紡ぎだす。途中で「眼球を涙が覆う」女優さんもでてくるのだが、家族の話でしかも父親と兄が暴力をふるう家族の話だった…。きれいごとだけでは済まない話を水平視点で静かに物語る筆者はインタビュー中もしきりにお酒を飲んでいる。あ、また飲んだ…そして書いてる…と思いつつページをめくるとまた筆者はお酒を飲んでいる…。肝機能障害でお酒を飲んだら肝臓が自然治癒することはありえず…。とにかく破滅的にお酒を飲み文章を書き、インタビューをしていた筆者の姿はなにやら鬼気迫るものすら感じる。「ビデオ・ザ・ワールド」「ビデオメイトDX」などに連載されていたこのインタビューはおそらく連載当時からかなり違和感を感じさせるものだったのかもしれないが、それでも連載が続いたのは、筆者がつづる物語の中に、当時の編集者や経営者がなんらかの希少性を見出したこともあるのだろう。そして遠からぬ将来におそらくなにか自滅的に消え去ってしまうのかもしれない危うさと…。1つの時代を切り取ったインタビューというよりも、おそらくこれから10年経過しても20年経過しても変わらない「人間」を描写した名作インタビュー集。文春文庫から定価771円。

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