2008年11月25日火曜日

空気の読み方(小学館)

著者:神足裕司 出版社:小学館 発行年:2008年 評価:☆☆☆☆☆
 コラムニストとよばれる職業の中でも一級の取材力と文章力を誇るのがこの神足氏ではないかと個人的には思っている。週刊アスキーに連載をもつが、どの文章も練り上げられた名文章と思いもかけない着眼点。「空気の読み方」というタイトルで取材力について神足氏に本を書かせた編集者もまた凄腕の編集者といえるのではないか。取材力をただ書籍などを作るスキルと限定せずに、「美人」がもつ悩みや限界などを理解してあげようとする努力などにも取材力が必要だとする神足氏の洞察力の深さに頭が下がる。「自分などなにものでもない」という自覚、自分がしゃべるのではなく相手をもって事実をしゃべらせる努力。それは自己愛を抑制して相手を理解しようとする努力から生まれてくる技だ。名刺の渡し方・受け取り方といった細かい作法から、ハナシの「誘い水」の向け方、マニュアルの背後にある理由の洞察など深い話が満載だ。文章に関係のある職業のみならず営業などの販売関係や企画部などのマーケティング担当者などが読んでも得るところが多い書籍だろう。メモも単なる事実の羅列ではなく発言したときの「印象」や「表情」などについても記入するというアドバイスにも感服した。「人というのは自分のことさえ勘違いする動物」という名言がちりばめられたこの新書。定価720円は明らかにお買い得の名著だろう。

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