2013年1月5日土曜日

パリ・世紀末パノラマ館(中央公論新社)

著者:鹿島茂 出版社:中央公論新社 発行年:2000年 本体価格:724円
 世紀末的な事柄というのは、著者によると実際の世紀末よりも15年遅れて到来してくるのだという。1900年が19世紀の世紀末だとすると、実際の終末感は1915年ごろに到来するということになる。第一次世界大戦が1914年で、1720年には南海泡沫事件、1721年にロシア帝国が始まる。1815年にはワーテルローでナポレオンが敗れ、セントヘレナ島へ流され、フランス革命にも一区切りをついたところ、と歴史を遡ると実際の「区切り」は確かに西暦の区切りに10数年遅れて到来するようだ。21世紀もまた2001年のお祭り騒ぎよりも、むしろ今年か来年かに大きな出来事が勃発してさらにこれまでの区切りをつけることになるのかもしれない。すでに福島原子力発電所事故などでこれまでのエネルギー政策の見直しが不可避になってはいるが、まだ本格的なエネルギー政策論議には到達していない。実行可能な再生エネルギーの活用と展望については、「これから」という段階だが、その結論も2015年ごろまでには見通しがたつ可能性は否定できない。
 そしてこの本、メトロが1900年にパリに開通したときのエピソードやパリの都市計画などのエピソードを通じて、十数年遅れて到来した「世紀末」を描写。遠く離れたパリの歴史と文化を通じて、東京の現在を考えさせてくれる内容になっている。パリの機能美はナポレオン3世とオスマン知事の功績ということになるが、これらの都市計画を成功させた要因と必然性(そして偶然も)それなりにあったのだ。これが東京であれば、今の課題は防災計画と環境問題、さらに超高齢社会への対応ということになるだろうか。都市計画の必要性はあるが財政問題などの成功要因がまだない、というのが課題ではあるが…。デパートの歴史やコンビニエンスストアの発想の源など歴史のみならず商業の隆盛という観点からみても興味深い。写真が多いのも嬉しい。
 

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