2013年1月31日木曜日

若者を殺すのは誰か?(扶桑社)

著者:城繁幸 出版社:扶桑社 発行年:2012年 本体価格:720円
 「若者」という言葉の示す範囲は存外広いかもしれない。通常は10代後半から20代前半ぐらいが「若者」ということになるが、年金問題や税金問題の観点からすると今では50代半ばくらいまでが「若者」に含まれる局面もある。この本でも指摘されているが、厚生年金の給付などの「格差」をみると30代と高齢者とでは6000万円以上の格差が生じる可能性もある。もはや賦課年金制度では日本の年金制度を維持することは不可能に近くなっているのだが、積立方式に移行するとなると現在の「高齢者」から反発がでる。投票行動が一番激しく、市民運動などでも先頭をきるのが、いわゆる「団塊の世代」で、保守政党から左派まで一様に高齢者に対する保護政策は変更するふしがみえない。
 こういったいびつな年金制度が、雇用問題にも影響を与える。たとえば定年延長制度がそうだったり、最低賃金法や労働者派遣法だが、これもまた「労働者の保護」という名目ではあるのだけれど、派遣事業を規制すると企業のほうで採用を自粛するから失業率の改善にはむすびつかない。定年延長制度を導入すると「若者」の就職率がおかされる。このままだと10年後、20年後には生活保護への「駆け込み需要」が増加するという著者の指摘がまさに現実になりかねない。
 こうした問題を「悪化」させているのは、一種の規制政策と保護政策で、格差問題を引き起こしたとされる小泉市場改革ではない…という論調が背後にみえる。賛成。もちろん必要な規制はある。環境問題や公正取引委員会などの活動は、効果があったとは思うが、こと雇用問題については各政党の政策、とりわけ民主党の政策は労働問題をより悪化させただけではないかと思う。「若者を殺すのは誰か?」、逆説的だが、「(生かそうとして)規制を持ち込む各政党・マスコミなどの論調や雰囲気」といったことになりそうだ。ある意味では小泉内閣の路線を継承する安倍内閣の政策に今後期待したいのだが…。

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