2013年1月9日水曜日

フランス革命の志士たち(筑摩書房)

著者:安達正勝 出版社:筑摩書房 発行年:2012年 本体価格:1600円
 フランス革命に関するもので安達正勝氏が執筆された書籍に「はずれ」はなし。「死刑執行人サムソン」(集英社新書)も非常に面白い本だったが、この本でもラ・ファイエット、シェイエス、ミラボー、ダントン、マラー、ロベスピエール、ナポレオンなどなだたるフランス革命当時の「志士」たちを取り上げ、巻末にはそれぞれの登場人物の生没年一覧が掲載されている。著者は1789年から1804年のナポレオン戴冠までをフランス革命と位置づけているのが独特だが、ジャコバンの恐怖政治から、テルミドールの反動、バランなどによる総裁政府からナポレオンの台頭、そして帝政の始まりと流れでみていくと、1799年のブリュメールのクーデターまでで区切るよりもナポレオンそのものが皇帝になるまでで区切ったほうが、過激な共和主義者が自ら独裁者になる変遷がとらえられて面白い。
 フーシェやタレーランなども取り上げられているが、やはり奥さんを助けるためにテルミドールの反乱に加担し、その後奥さんに捨てられて寂しく老後を迎えたタリアンの一節が興味深い。時代に順応できた奥さんとできなかった元貴族の旦那というこのコントラストは、フランス革命当時も巷でみられたものだろうし、あらゆる時代の境目でリフレインされる男女の間という感もなくはない。ナポレオンもマリー=ルイーズとの関係をみれば、タリアンとさして変わらない最後を迎えている。
 世界史の教科書的な内容も(ナポレオンの大陸封鎖政策やヨーロッパ諸国に近代主義や国民国家意識をもたらしたといったことなど)もふまえ、さらに個々の「志士」たちの人生を掘り下げていくというかなり欲張りな本で、しかもそれが面白いのだから1600円で286ページの本はかなりのお買い得。こういう歴史関係の書籍はやはり執筆者の「思い入れ」によって出来具合が左右されるものだと再認識。
 

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