2012年11月7日水曜日

遺品整理屋は見た!(扶桑社)

著者:吉田太一 出版社:扶桑社 発行年:2009年 本体価格:619円
 購入したのは2011年9月20日の3刷。栄枯盛衰の激しい文庫本ではロングセラーの領域に入る。それだけ「死」ということに対して敏感にならざるをえない時代なのかもしれない。単行本段階では「孤独死」という表記だったが、テリー伊藤さんらの「孤独死は悪いことなのか」という疑問を受けて文庫本段階では「孤立死」という表記に改めてあるそうだ。孤立死の場合、遺品の引き取り手がないほか、死亡時から数日、場合によっては数ヶ月経過してから発見されることがある。そうした場合の清掃や遺品整理をおこなうのが著者の仕事で、場合によっては自殺現場や殺人現場などの清掃もおこなわなければならない。描写がとにかく生々しく、こういう描写はやはり現場をふまえた人でなければ書けないだろう。
 高齢社会になって、しかも地方では過疎化、都市部では個人主義が発達すると、おそらくこうした孤立死の事例は増加していくと予想される。著者は遺品整理のビジネスをおこないつつ、孤立死の減少にも取り組んでいるが、自分が死んだあとの「遺品」で自分の人格や人生が推し量れるのだとしたら、いったいあとに何が残せるのか…を考えさせられる。理想としては書籍とパソコンと携帯端末のみ残して、それも全部火葬にしてもらうのがベストだが、それだけでは社会に対してなんだか申し訳もたたないし…。新聞の死亡欄に掲載されるような人は孤立死ではないが、おそらく一年に何万人もの人が孤立死をしている。読み終わったあと峻厳とする文庫本である。

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