2012年10月29日月曜日

ハッカーの手口(PHP研究所)

著者:岡嶋裕史 出版社:PHP研究所 発行年:2012年 本体価格:760円
 IPアドレスのみを証拠とした操作で無実の人が逮捕・拘留、さらには検察庁から起訴された方もいらっしゃる。IPアドレスは基本的に個別的なネットワーク上の「住所」だが、随分前からプロキシサーバを利用したIPアドレスの取得はできるようになっていたし、IPアドレスそのものでは必ずしも「真犯人」とは断定できない状況は昔から変わっていない。ただ今回の事件の報道によれば2秒で300文字の文章とネームなどを「書き込んだ」ことが確認されており、コメント欄だけならばコピペで書き込めるとしてもそのほかの項目まで埋めてしまうのは物理的に無理。今後「いたずら」目的の掲示板への書き込みも継続して発生するだろうから、IPアドレスに加えて客観的な状況も固めた上での捜査・起訴をのぞみたい。科学技術は進歩するし、知能犯も増えていくが、だからといって科学技術に遅れをとるわけにもいかない。ここは情報通信技術に詳しい専門家をさらにサイバーパトロールに投入していくべき時期なのだろう。
 で、この本はスキャベジングやショルダーハッキングという古典的な、しかしかなり確実性の高いハッキングからパスワード攻撃、誘導攻撃、盗聴攻撃、ボット攻撃、次世代攻撃と現状で考えられる6つのハッキングについて紹介。そして著者自身も認めているようにハッカーの技術水準は相当に高くやはり怖い存在であることがジワジワ感じ取れる内容になっている。優秀なクラッカーは1000万台のボット(操作できるパソコン)をもっているというが、日本だけでみれば13人に1人のパソコンがなんらかのボットに浸食されている可能性がある(実際はそれほどの比率ではないかもしれないが日本の人口を1億3千万人として、ハッカーが日本国内のパソコンのみを標的としたと仮定して)。セキュリティソフトなどはしっかりしておいてアナログなハッキングにも注意しよう…としたうえで、やはり本当に重要な情報というのは、もしかすると手書きのメモで貸金庫というのが一番安全な時代になったのかもしれないというのを実感。

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