2012年10月16日火曜日

時代の先を読む経済学(PHP研究所)

著者:伊藤元重 出版社:PHP研究所 発行年:2011年 本体価格:820円
 国際経済学者にして流通業界や食品、農業問題にも詳しい伊藤元重氏の著書。1テーマでマクロ経済や流通機構、農業問題などについて解説を加えていく方式だが、(おそらく)、新書ということもあっていろいろ複雑な外部経済的な問題についてはざっくり捨象。それが論点を逆に浮き彫りにしてくれる。消費税増税についても若い世代はあまり反対はいなかったというが、今の年金制度ではかなりの負担が若い世代にほど重くのしかかる。消費税を福祉目的の特定財源にするかしないかは別問題としても、消費税増税で消費意欲がいまだ活発な高齢者にも一定の負担がかかるという意味では、消費税増税にもそれなりの意義はある。
 今の不況が終わっても、少子高齢問題はそのままざっくり残るため、医療介護の財源をどう手当していくのかは大きな問題だ(法人税を軽減して投資意欲を高めて、消費税で広く薄く負担するという意味合いは私も一定程度の理解はできる)。全体を通してみるとやはり市場主義に一定程度医療分野も介護分野も、そして貿易も委ねていくという発想が根強い本だが、高度経済成長期のように公的部門が規制と補助金でがんじがらめにしばっておくには、どの業界が抱える問題も範囲が広くなりすぎた。いろいろ一進一退はあれど、規制緩和と市場主義社会に向かっていかざるをえない時代に突入したようだ。

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