2012年10月3日水曜日

今日ホームレスになった(彩図社)

著者:増田明利 出版社:彩図社 発行年:2012年 本体価格:619円
 「成功の方程式」なるものは人それぞれだが、「失敗の構図」はなんとなく似ているような気がする。「幸福な家庭は単一で不幸な家庭はさまざま」といったのはトルストイだが、現在では「幸福になるプロセスはわりと複数の要因があって不幸になるプロセスは意外にシンプル」ではないか。市場原理が強い現在では、消費者金融からの借金やリストラ、家庭内の不和といったあたりが主要因で、15人の元会社員のエピソードを読んでいくと、本当の原因は「金銭感覚からの乖離」や「コミュニケーション不全」ではないかと思う。ホームレスになる前にも「家」はとりあえずあるのに、奥さんや家族との不和が原因で失踪や家出にはしる人が複数いる。これ、少なくとも会社のリストラが原因というわけではなくて、むしろ家族とのコミュニケーション不全が原因だったといえるのではないか。就職の口もないわけではなかったのに「手取り10数万円では新卒よりも低い」とかいう理由づけで働かなくなった人が複数見受けられたが、これも発想が足し算と引き算だけで、実際には過去の収入と貯金、さらなる所得というように「積分」で考えていけば、正直、手取10万円でも5万円でもホームレスよりはある意味ではまだ余裕の生活がおくれるという考え方もできたはずではないかと思う。
 う~ん。確かにだれしもホームレスになる可能性はある。ただそうならないように「予防線」をあれこれはっておくこともまたできる。市場原理の過熱化はあまり歓迎できないが、かといってホームレスに至ったプロセスについては万人が万人同情ばかりもできない。

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