2012年10月7日日曜日

ジョゼフ・フーシェ(岩波書店)

著者:シュテファン・ツワイク 出版社:岩波書店 発行年:1979年 本体価格:940円
 いったん廃刊となり古書店でしか出回っていなかった本が復刊。シュテファン・ツワイクの本は面白い面白いといわれているが、「マリー・アントワネット」よりこちらのほうが断然面白い。
 もともとは商人の家に生まれ、数学を教えつつ地方で牧師をしていたジョゼフ・フーシェ。その後フランス革命を期に議員となり、ジロンド党的穏健派から急進的ジャコバン派へ。ルイ16世の死刑の決議には賛成票を投じ、王党派が多かったリヨンでは私有財産を否定し、宗教を否定し、急進主義者、共産主義者としてふるまう。その後ロベスピエールと不和になるが、フーシェはジャコバン・クラブの総裁へ就任。ロベスピエールを策略を用いてギロチン台へ。さらに総裁政府の時代には3年間浪人生活をおくったのちにフランス共和国の警務大臣に就任。5人の総裁の統治のもとで情報網を作り上げる。その後ナポレオンの時代にも警務大臣・内務大臣をつとめ、ルイ18世による王政復古の時代にも大臣として生き流れる…。この間、革命政権によって数々の貴族がギロチン台に送られ、さらにその後ジャコバン派が死刑に処され、さらにはナポレオン王党派が王政復古で処刑され…という血なまぐさい歴史をみると、この変化の激しいフランス革命後をここまで巧みに生き残っていたのはジョセフ・フーシェのみ。最後の最後には失脚するのだが、僧侶出身なのにリヨンでは宗教を否定し、ジャコバン派でルイ16世の死刑に賛成したのに、その弟のルイ18世では入閣を果たすなど、当時のフランス国民も仰天したようだが、21世紀をむかえてもなお仰天動地の生き残り。非常に面白い伝記である。一定程度、フランス革命から王政復古まで歴史の流れがあると、いきなり読むよりさらに楽しめる伝記ではなかろうか。

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