2012年11月13日火曜日

ダイナー(ポプラ社)

著者:平山夢明 出版社:ププラ社 発行年:2012年(文庫本) 本体価格:740円(文庫本)
 大藪春彦賞を受賞したバイオレンス作品がなんとポプラ社から発行。昔のポプラ社というと児童文学系の地道な出版社というイメージだったが、数年前から自己啓発の書籍やらタレントの小説やらと話題作を提供。一部やや勇み足はあったとはいえ全体的には21世紀の出版社を担う有望株という印象。
 で、この小説もまあ…悪くはない…とはいえ必ずしも良くもない…がまあ面白い実験作品かな…ということで読後感は悪くはない。過激な描写もまあまああるが、ラストはわりと勇気がでる結末。映画「レオン」などを彷彿とさせる場面描写もあり、可愛げはないが物語に花をそえる犬なども登場してある程度楽しめる。
 ウェブ社会を反映して、主人公「オオバカナコ」は闇サイトで募集していたあるアルバイトに応募。車を運転するだけの簡単なバイトと思いきや、拷問されて殺されそうになった寸前に「会員制のダイナー」とウェウイトレスとして一命を得る。「殺し屋」専門のそのダイナーには「オオバカナコ」がウェイトレスになるまえにすでに8人のウエイトレスが「顧客」によって殺害されていた…。
 ミステリーもそうが、このヴァイオレンス小説も「閉ざされた空間」。「バトルロワイヤル」も「脱出不可能な島」という閉ざされた空間だったが、ある程度密度が濃い世界観を打ち出すには物理的に閉鎖された空間が理想形なのかもしれない。これ、地下にあるコンクリートの壁に覆われたダイナーだから緊張感が濃縮されるが、オープンテラスの「会員制ダイナー」ではここまで濃密なヴァイオレンス描写もできなかっただろう、などと思う。

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