2011年2月6日日曜日

日教組(新潮社)

著者:森口 朗 出版社:新潮社 発行年:2010年 本体価格:740円
「日教組が全部悪い」というのは飲み屋ばりの教育談義では欠かせないアイテム。だいたい日教組の悪口だけいっていればそれで周囲も丸くおさまるという構図なのだが、それでは過去日教組がどれだけ自分の生育過程に影響があったか…というとさほど思い出がない。たしかに一部マルクス経済学かぶれの先生方もいらっしゃったが、それで自分が影響を受けたかというと影響は受けていない。で、この本だが日教組が戦後文部省主導でできあがり、勤務評定闘争までは管理職も構成メンバーであったこと、その後、職場の穏当なメンバーと執行部の過激なメンバーの2極化と日本共産党シンパの全教メンバーに分裂したこと。現在では社会民主党と民主党支持の団体に近いことなどが説明されているほか、日の丸や君が代問題をめぐる問題点(法律化されたことにより、将来政権交代とともに別の国歌や国旗に変えられる可能性があること)なども指摘されている。メリットとデメリットを穏当に説明してあるほか、現場の指導力という意味では日教組の教員とそうでない教員とで区別されるべきではない、という指摘もされている。特定の主義主張にのっとられた団体が教育の現場に君臨しては確かにまずいが、この労働組合の場合には、文部省や自由民主党なども一定の関与があり、それほどコトは簡単ではない。少なくとも教育の荒廃(?)に手を貸した…という意味では行政や政治も責任をおっており、「シンプルに日教組が悪い」という飲み屋談義を一歩さらに進化させてくれる内容であることは確か。もうこの組合を組織率が低下しており、それほど影響力もないのでは…ともいえるが、民主党がこの組織を無視できない背景についても説明がしっかりなされている。

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