2011年2月16日水曜日

戦略の原点(日経BP社)

著者:清水勝彦 出版社:日経BP社 発行年:2007年 本体価格:1600円 評価:☆☆☆☆☆
経営戦略論に関する本はやまほど出版されているが、およし知りうるかぎり基本的な論点をこれだけわかりやすく解説してくれる本はなかった。経営戦略の考え方の「基本」(素振り)に立ち返るという発想とそれを応用させて現実の問題を組み立てていこうという著者の考え方と本の構成がよい。経営資源は有限なので種々の相反する目標のいずれかをそぎおとしてトレードオフの関係を抜け出していく。セグメンテーションをして特定の顧客にターゲットをあわせるということはそれ以外の顧客をそぎおとすということに他ならない。ではなぜその特定のセグメントに集中していくのか…といった理論構成が見事。強みを活かして、必ずしも安売りに転化していかないようにする、という戦略は「自分自身の強みはどこか」という自己認識の問題でもある。差別化をするにはまず「強み」を発見しなければならないという指摘が重要だと思う。そしていったん気づいた強みをスイッチングコストを高めることで顧客維持につなげていくという考え方も基本に忠実だ。事業戦略やM&A戦略、リーダーシップ論などほぼ経営戦略の代表的なジャンルは網羅してあり、この本から経営戦略論をきわめていくという読書方法もありだろう。意思決定論とリーダーシップ論などの考察も見事。

0 件のコメント: