2010年9月4日土曜日

英仏百年戦争(集英社)

著者:佐藤賢一 出版社:集英社 発行年:2003年 本体価格:680円
 なんでいまさら百年戦争か、というと「大聖堂」シリーズを読んで中世社会に興味をかきたてられたから。特に「大聖堂 世界の果てまで」シリーズはちょうど百年戦争でエドワード3世がフランスに侵攻した時代。日本人にはちょっと理解しがたい戦争も、フランス人の権力争いという構図でとらえ、国家という認識がまだ共有されていない時代の話と考えると理解ができるようになってくる。小さな町の農民にとっては領主が絶対であり、領主は最終的には国王の臣下として動く。それだけ国王の座は魅力的なポジションであり、フランス王の王座をめぐって、ノルマン王朝の系譜が異議をとなえた結果、フランス人同士の争いがえんえんと続く…という展開に。そしてその流れから今度は薔薇戦争が派生して発生するという流れも理解できる。
 封建制度というのは昔は無理やり記憶させられた用語だったが、なるほど封建制度があったからこそ国家という概念がなくても「国」レベルの軍隊が組織化され、戦争をすることもできた。利権のシステムでもあり、それは軍隊を差し出すことと領土を増やすことがセットになっていたわけだ。著者オリジナルのジャンヌ・ダルクの分析など興味深い著述が満載。

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