2010年9月21日火曜日

「怖い絵」で人間を読む(NHK出版)

著者:中野京子 出版社:NHK出版 発行年:2010年 本体価格:1100円
 人気シリーズ「怖い絵」とはまた違う視点で、編まれた新書。やはり面白い。「怖い絵」シリーズと重複する絵画もあるのだが、「狂女ファナ」「フェリペ・プロスペロ王子」などはハプスブルグ家の系譜に興味をひかれてはまりこんでいる私には、解釈の一文一文が面白くてしょうがない。絵画には矢印がひかれて、解説が読みやすくなっている。スペイン・ハプスブルグ家の最後は「カルロス2世」だが、面長でやや癖のある表情は、やや病的な性格をそのまま絵画が写し取っているようにも見える。新書なので4色のページで絵画を楽しみつつ、著者独自の「怖い解釈」を読むことができる。こういう綺麗で丹精こめて作られた新書を手に取ると、電子書籍の時代とはいってもなかなか本と同様に読者が楽しめる時代はそうはこないのではないかという思いもする。

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