2010年9月12日日曜日

ニッポンの刑務所(講談社)

著者:外山ひとみ 出版社:講談社 発行年:2010年 本体価格:800円 評価:☆☆☆☆
 刑務所もしくは刑事施設の写真がこれだけ収録されている本は珍しいのではないか。おそらく刑事施設の職員および幹部からよほど信頼を勝ち得ていないと撮影どころか立ち入りも難しかったのではないかと思うが、1つのテーマにこだわり、何度も取材を重ねていった結果がこの新書に凝縮されているのだろう。力作であると同時に貴重な歴史資料にもなりうる内容だ。
 過剰収容や犯罪の国際化・高齢化、刑事施設の過密化といった問題点とともに、刑事施設の「雰囲気」が漂ってくる。またエステティシャンの職業訓練なども実施されている様子が写真で掲載されており、「刑事施設の職業訓練って役に立つんだろうか」といった疑問も融けてくる。累犯が多いのが特徴だが、その分100人のうち1人でも更正復帰することが職員の方々の生きがいともなっているようだ。少年院和泉学園のシンクロナイズドスイミングやハイテク刑務所(PFI)など時代の流れと変化に対応しようとしている現場の様子と人手不足の過剰労働の様子も克明に描写。2020年、2030年に刑事施設の課題といったものを論じるときの1級資料であると同時に、ただ「刑務所って怖い」という知らないが故の「怖さ」を払拭するにも有用ではないかと思う。一種の隔離施設ではあるが、だからといって自分の住んでいる一般社会と無縁の世界ではなく、その「隔離施設」からいかに一般社会に引き戻すかは、他の社会人にとっての責務でもある。ただ単に無知からくるゆえの「怖い」は、累犯を増加させることにしかならない。

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